近年、日本の不動産市場で存在感を増しているのが、教育目的で移住や物件購入を検討する中国人富裕層のファミリー層です。
彼らは単に住まいを探しているのではなく、「子どもにより良い教育環境を与える」ことを最大の目的とし、それを実現するための手段として物件購入を位置づけています。
その背景にあるのが、中国で広く浸透している「学区房(がっくぼう)」という考え方です。
学区房とは?
学区房とは、教育資源に恵まれた小中学校の学区に位置する住宅のことで、中国ではこの“学区に属していること”が子どもの進学を左右する非常に重要な要素です。
教育への関心が極めて高い中国人家庭にとって、学区房は単なる住まいではなく、子どもの未来に投資するための「教育資産」として認識されています。
日本では、中国ほど学校間の格差は顕著ではないものの、それでも“教育的に評価が高い地域”は確実に存在します。
たとえば東京都の文京区や世田谷区、大阪府の豊中市や兵庫県の西宮市などは、進学実績のある公立学校が多く、教育熱心な家庭が集まる地域として知られています。
こうしたエリアは、治安や生活環境も良く、学習塾や図書館、公園といった学びを支える施設が充実しており、結果的に資産価値も安定しやすいという特徴があります。
本当に知りたいのは?
このような地域にある物件を紹介する際、従来のように「広さ」や「駅からの距離」「築年数」といったスペックだけを説明していては、富裕層の心には響きません。
彼らが本当に知りたいのは、「このエリアで、どんな教育が受けられるか」「子どもの将来にどうつながるか」ということです。
したがって営業の現場では、
「このエリアは教育水準が高く、学力平均も高めです」
「周辺には有名塾や私立校も集中しており、教育環境に恵まれています」
「教育意識の高い家庭が多く住んでおり、子どもが刺激を受けやすい地域です」
などといった、“教育”を軸にした提案が極めて有効になります。
また、「この地域は日本で言えば“文教エリア”です。中国でいう〇〇学区に近い感覚ですね」といった形で、中国の教育事情と結びつけて説明することも、顧客に安心感と理解を与えるポイントになります。
特に教育を軸に物件を探している方に対しては、「この家は、子どもの未来を支える“教育資産”です」と断言することで、単なる居住空間ではなく、“未来をつくる場所”としての価値を訴求できます。
“家族での長期的な生活設計”を前提に
中国人顧客の多くは、家を買う際に“家族での長期的な生活設計”を前提としています。
そのため、将来の子どもの進学・キャリア・人間関係までを視野に入れて住環境を選びます。不動産営業として信頼されるためには、こうした家族の未来を共に描けるかどうかが問われます。
つまり、
「この物件は資産価値がある」ではなく、「この地域で、お子さんがどう育っていくか」
「どういう人たちと関わり、どんな教育が受けられるか」
を語れるかが、信頼獲得のカギになります。
さらに、中国人顧客との取引においては、学区や学校の制度について丁寧に説明できる体制や、必要に応じて中国語対応が可能な資料・スタッフの存在も大きな信頼材料となります。言語の壁を越えた「教育への理解力」こそが、競合と差をつける最も強力な武器になるのです。
結論
これからのインバウンド不動産営業においては、学区房的な視点が欠かせません。
教育熱心な外国人ファミリーに対して、単なる物件紹介ではなく、“子どもの未来を形にする提案”ができる営業こそが、選ばれる時代です。日本の不動産を「教育×投資」という観点で訴求できれば、価格競争ではない、付加価値型の営業戦略が実現できます。
今後、学区別の進学実績や教育関連施設の情報、学区マップなどを営業資料に組み込み、教育軸でのプレゼンができるようになれば、より一層中国人顧客の心をつかむことができるはずです。