中国の越境EC市場は、今や世界最大級の規模を誇り、なおも拡大を続けている注目の分野です。
ここでは、その特徴を最新データとともに、わかりやすく紹介します。
1.越境ECとは?
近年の中国人顧客は、かつての「爆買い型」観光客とは大きく異なります。多くは教育や医療を重視する富裕層・知識層で、情報収集も慎重かつ戦略的です。
越境EC(Cross-border E-Commerce)とは、国をまたいで商品を売買するオンライン取引のことを指します。
たとえば、日本から中国の消費者に商品を販売する行為がそれに当たります。インバウンド消費がコロナ禍で一時的に止まる中、中国では「海外からのお取り寄せ」が日常化し、越境ECは生活の一部として根づいてきました。
2.市場規模と成長スピード
中国の越境EC市場は2023年に約1,831億米ドルに達し、前年比5.1%の成長を記録しました。
今後もこの成長は続き、2025年には約2,149億米ドルに達する見通しです。これは世界でもトップクラスの規模であり、日本や欧米の企業にとっては非常に大きなビジネスチャンスとなっています。
3.主な購入チャネル
中国の越境EC市場には複数のプラットフォームがありますが、特にアリババが運営する「天猫国際(Tmall Global)」が大きなシェアを握っています。
そのほか、京東(JDcom)、拼多多(Pinduoduo)といったEC大手も越境部門を強化しており、上位3社だけで市場の9割近くを占めています。
4.中国人消費者の購入動機
中国の消費者が海外製品を購入する理由として最も多く挙げられるのが、「品質への信頼」です。偽物の心配が少なく、安心して買える日本製品は特に人気があります。
次いで、「国内で手に入らない商品」「価格の魅力(免税やセール)」といった理由も大きな動機となっています。
5.人気の商品カテゴリ
日本からの越境ECで売れている商品のジャンルとしては、基礎化粧品や健康食品、ベビー用品、アニメ関連グッズなどが挙げられます。
特にコスメはブランド認知度が高く、SNSや口コミから火がつくことが多いです。
6.決済方法とスマホ利用
中国の越境ECでは、モバイル決済が主流です。アリペイやウィーチャットペイが主に使われており、決済スピードが非常に早いのが特徴です。
また、全体の96%以上がスマートフォンを通じて買い物をしており、モバイル対応は必須となっています。
7.物流の仕組み
越境ECには「保税区倉庫モデル」と「直送モデル」の2種類の物流モデルがあります。
前者は中国国内の保税エリアに商品をあらかじめ在庫として保管し、注文後すぐに出荷する方式です。配送が早く、利用者の満足度も高いのがメリットです。
一方、直送モデルは日本の倉庫から注文ごとに発送する方式で、在庫リスクが少なく、小規模な販売にも適しています。
8.最新トレンド:ライブコマースとSNSの影響力
最近の大きな特徴として、SNSを活用したライブコマースが急成長しています。
抖音(TikTokの中国版)や小紅書(RED)などのSNS上で、インフルエンサーが商品の紹介をライブ配信し、そのまま購入へとつなげる手法が広まっています。
短時間で商品が売り切れることも多く、これが新たな販売チャネルとして定着しつつあります。
9.今後の展望と日本企業へのヒント
中国の越境EC市場は今後さらに拡大し、特に中間層や若年層の購買力がますます高まっていくと予想されます。
日本企業にとっては、品質の高さや安全性という強みを活かしながら、「商品に込めたストーリー」や「日本らしさ」をSNSを通じて発信していくことが成功の鍵となります。
また、スマホ対応、現地語対応、決済の簡易化といった細部への配慮が、信頼獲得に直結します。
まとめ
中国の越境ECは、単なる“オンライン販売”ではなく、「文化と信頼の輸出」でもあります。商品力だけでなく、どう届けるか、どう魅せるかが問われる時代です。
小さな企業でもストーリーと誠実さがあれば、中国という巨大市場で勝機を掴むことが可能です。